昔話の語り部をしている“お姉さん”が顔を見せた。ときどき四倉や久之浜で“仕事”があると、帰りに寄る。
いつものように近況報告を兼ねて雑談した。筋肉の話で盛り上がった。ちょうどテレビのニュースで専門家が熱中症と筋肉の関係を解説したのを聞いたばかりだった。
筋肉は水分の貯蔵庫。年寄りはコロナ禍による外出自粛で筋肉が衰えている。衰えた筋肉では水を貯められない。水を一度にたくさん飲んでも体内からすぐ出てしまうので逆効果。こまめに水分を補給することが大切、ということだった。
お姉さんは、こんな実話を披露した。ある年寄りを車に乗せたら、シートを倒して横になった。座っていると尻が痛いのだという。
年を取ると尻の筋肉が減る。すると、座っているより横になっている方が、痛みがないだけ楽になる。「在宅入院」のようなものだ。
そういえば、「在宅ワーク」に飽きると、座椅子を倒してすぐ横になる。そうやって本を読んでいることが多い。これも「在宅入院」と同じか。
パソコンに向かいすぎて腰のあたりが張ってくるせいもあるが、なんとなく尻の痛みを感じていることも理由の一つかもしれない。
では、筋肉の衰えをどうしたら抑えられるのか。お姉さんは朝のラジオ体操から始まって、散歩やスクワット、夜の風呂でのマッサージなどを日課にしているという。
私はといえば、トイレを利用するたびに、「腿(もも)上げ」に近い足踏みを50回やる、その程度で終わっている。
できれば朝夕、散歩を日課にすればいいのだろうが、実際、散歩をしていたころは筋肉の衰えを自覚することもなかったのだが、早朝からカンカン照り=写真=ではかえって危ない。
冬は冬で寒さが血管に影響しかねない。で、家の中での足踏みにとどめている、という次第だ。
学生時代は陸上競技部に所属していた。短距離系だったので、太腿は今の2倍はあった。逆に言えば、足の筋肉は若いときの半分に減った。
啄木は働いても暮らしが楽にならないと手を見たが、私はこのごろ、歩けばすぐ筋肉が酸欠になると、半ズボンから突き出た太腿を見る。
ついでながら、「散歩」という言葉は啄木が最初に使ったと、研究者で詩人の中村稔さんはいう。
平成20(2008)年夏、いわき市立草野心平記念文学館で開館10周年記念企画展「石川啄木 貧苦と挫折を超えて」が開かれ、中村さんが「啄木の魅力」と題して記念講演をした。
そのとき、啄木の短歌「気弱なる斥候のごとくおそれつつ深夜の街を一人散歩す」を挙げて解説し、「散歩」は明治以降の新しい行為と語った。
足の筋肉を維持するには散歩が一番、とはわかっている。お姉さんの話を聞き、テレビの解説を聞いて、もう少し時間をかけて「足踏み」を増やさないと、という思いになった。
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