2022年7月27日水曜日

男の日傘

                     
  日曜日(7月24日)は、昼食が遅くなった。夏井川渓谷の隠居からの帰り、小川のコンビニでサンドイッチその他を買い、駐車場で食べた。

 そばの緑地は、1カ月前にはヤグルマギク=写真=が満開だった。「ヤグルマソウ」と呼ばれることもあるが、ユキノシタ科のヤグルマソウと混同されるため、現在ではヤグルマギクに統一されているそうだ。

ヤグルマギクはヨーロッパ原産の帰化植物で、夏に青紫色の鮮やかな花を咲かせる。小川の緑地も青紫色の点描が美しかった。

今は花期を過ぎて刈り払われたため、車にいても眺望がきく。小丘の緑の連なりの中にポツン、ポツンと茶色がかったところがある。少しまとまってあるのは、三島のハクチョウ飛来地東側の森らしい。7月も後半に入って、「ナラ枯れ」が目立つようになってきた。

駐車場には、日陰はない。東向きに止めれば、運転席に直射日光が差し込む。逆向きにすると、今度は助手席が熱くなる。

前にも書いたことだが、夏はおおよそ半そで・半ズボンで過ごす。車もそのまま運転する。右腕と右足が焼きごてを当てられたように熱くなる。

ナラ枯れを確かめながらモグモグやっていると、太ももが熱くて我慢がならなくなった。カミサンから薄手の長袖を借りて、フランス料理のナプキンよろしく太ももにかける。ようやく日光が遮断されて熱の痛みが消えた。

女性は、夏の日の外出には日傘をさす。アームカバーをする人もいる。男性も耐えられない暑さになったら、アームカバーをし、日傘をさせばいい――年を取った今はそんなことを考えるようになった。

暑さがピークになる午後2時ごろ、街に住む知り合いの男性が日傘をさして歩いているのを目撃したことがある。なるほど、人の目など気にせずに合理的な判断をしたのだろう。

別の日、義弟を街の医院へ送って行った。たまたま同じ曜日で、同じ時間帯に同じ場所を通った。日傘をさして歩いているかな――目で追ったが、姿はなかった。

その帰り、夏井川の堤防を利用すると、日傘をさした人間が歩いている。追い越しながら確かめると、若い男性だった。

男の日傘を肯定しながらも、私らには「男は日傘をささない」とか、「外聞が悪い」とかいったミエのようなものが残っているらしい。

しかし、若い人たちの間には暑ければ日傘をさして直射日光を遮る、そういう習慣が生まれつつあるのだろう。

男の日傘に、遠い記憶の底から立ち上がってきたものがある。フランスの作家、ミシェル・ビュトール(1926~2016年)が書いた「エジプト―土地の精霊―」だ。

イスラム世界の知識ゼロの17歳にとっては、エジプトはただただ乾いて暑い国、人々は、日中は横になってやりすごし、夜になって動き出す。そうした方がいいところまで、暑さがきつくなってきた? いや、ただ単に年を取っただけ?

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