夏井川渓谷の隠居の庭にネジバナが咲いている=写真。時期的には終わりに近い。咲き始めたのは1カ月ほど前。写真を撮り忘れ、最後の1本を見て、記録としてパチリとやった。
ネジバナ。花はねじれて咲くが、ピンクの色が鮮やかだ。そして、これはこじつけ。ねじれながらも、かろうじてまっすぐ立っている、そんな印象の本を読んだ。
寺尾文孝著『闇の盾』(講談社、2021年)。サブタイトルに「政界・警察・芸能界の守り神と呼ばれた男」とある。
著者は高卒後、警視庁の警察官を6年務めたあと、元警視総監で参議院議員の秦野章の私設秘書になる。その後、危機管理会社を設立し、「政治家、企業経営者、宗教団体、著名人などあらゆるところから持ち込まれる相談ごとやトラブルに対処」した。
違法行為や不正には手を染めたことはないという。しかし、危ない橋をわたったことは何度もあるという。それらすべてを墓場に持っていくつもりだったが、考えを変えた。二度にわたってがんの手術を受けたのが大きい。で、走り抜けた自分の60年間を語ることにした、という。
ヤクザの親分が出てくる。イトマン事件に象徴されるようなバブル紳士や検事が登場する。
京都新聞社の経営問題に触れているところがある。バブル紳士の一人、許永中が「京都新聞社とその子会社の近畿放送(KBS京都)をめぐる経営混乱にも介入した」。
その混乱の根っこが断ち切れていなかったのか、先日、京都新聞社の持ち株会社(京都新聞ホールディングス)が、オーナーの大株主に多額の報酬を違法に支払っていたとして、役員報酬の返還などを求めて地裁に提訴した。
もう一つ、これもバブル紳士がらみだ。イ・アイ・イグループを率いて、「環太平洋のリゾート王」と称された高橋治則という人間がいた。彼はバブル崩壊後の不正融資事件で上告中に亡くなった。
彼は電通の幹部だった兄を自慢していたそうだ。「高橋の実兄の治之は電通で出世を重ね、常務、専務を経て東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の理事となり、2020年12月にも菅義偉(すがよしひで)総理と会食するなど、存在感を示している」
その「兄」の会社が、大会スポンサーとなった紳士服大手企業から多額の資金提供を受けたとされる事件が明るみに出た。
東京地検特捜部はきのう(7月27日)、企業の前会長宅を贈賄容疑で捜索した。前日には、電通本社や元理事の会社兼自宅を捜索した。元理事への捜索は受託収賄容疑だった(朝日新聞)。
なんてことだ。『闇の盾』の中の話が、形を変えて今に直結していた。政界の、社会の闇の奥にはいったい何があるのか。
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