JR東日本が利用客の少ない地方路線の収支を初めて公表した。2019年度実績で一日当たりの平均乗客数が2000人未満の35路線・66区間を対象にした。全区間で赤字だという。
マスメディアの報道では、知りたい情報が限られる。ここはJR東日本が発表し、ネットにもアップしているニュースリリースを読むのが一番だ。
最も知りたいのは夏井川渓谷を走る、わが磐越東線(対象区間はいわき~小野新町)=写真=の収支状況だ。メディアの記事も参照しながら概略を見る。
いわき~小野新町間は営業距離が40.1キロ。2019年度の収支は7億3700万円の赤字だった。一日当たりの乗客数は、1987年度は1038人とまだ千人台だったが、2019年度は273人と74%も減少している。
100円の運輸収入を得るのにどれだけ費用がかかるかをみた「営業係数」は、メディアの記事では例示的に出てくるだけだ。磐東線についてはじかにニュースリリースに当たるしかない。
それによると、いわき~小野新町間では、100円の収入を得るのに2351円の営業支出が必要になっている。年間赤字が7億円を大きく超えるわけだ。
日曜日は渓谷の隠居で土いじりをする。隠居のそばを県道小野四倉線と磐東線が並行して走る。列車は「時計」替わりでもある。
土曜日に泊まっていたころは、いわき行き最終列車が晩酌の終了タイムになり、翌朝の同一番列車が目覚まし時計になった。
そうそう、そのころは、カミサンがいわき発の一番列車でやって来た。江田駅まで迎えに行くのが日曜朝一番の仕事だった。
磐東線は大正3(1914)年、最初に郡山―三春駅間が開業した。以後、郡山といわき側から少しずつ営業区間を伸ばし、いわき側は小川郷駅、郡山側は小野新町駅の間、夏井川渓谷の難工事を経て、大正6年10月10日に全線が開通した。
平成29(2017)年10月8日、臨時の「磐越東線全線開通100周年号」が郡山―いわき間を往復した。ディーゼル機関車2両に旧型客車4両の6両編成で、チョコレート色の客車は“乗り鉄”、沿線は“撮り鉄”でいっぱいだった。それが最近で最もにぎわったイベントだろう。
隠居のある小集落・牛小川でも、住民が自発的に集まり、列車が通過すると、日の丸やミニ鯉のぼりを振って歓迎した。
さて、7億3700万円の赤字をもっと細かく見てみる。磐東線のいわき~小野新町間は一日に上下各6本しかない。時間帯としては午前、午後、宵~夜各2本というところだ。
一日当たりに換算すると赤字は約202万円、一本当たりではざっと16万8000円。これからは、隠居のそばを2両編成の列車が通過するたびに、この数字が思い浮かぶことだろう。
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