いわき市立草野心平記念文学館で、「ふつうがえらい! エッセイスト佐野洋子展」が開かれている(9月19日まで)。
関連行事として、7月31日の日曜日、「佐野洋子のとっておきばなし」と題するトークイベント」が行われた。
彼女のエッセー集などを手がけた編集者の刈谷政則さんと、彼女の長男でイラストレーターの広瀬弦さんが対談した。
佐野洋子(1938~2010年)はロングセラーの代表作『100万回生きたねこ』で知られる絵本画家だが、痛快な文章で知られたエッセイストでもある。
企画展では、絵本原画はもちろん、自筆原稿・資料などが展示された。また、館内のアトリウムロビーには、彼女の“名言”が七夕飾りの吹き流しのようにつるされ、来館者はその間を、名言に触れながら移動する仕掛けになっている。
チラシにも名言の一部がちりばめられている。「私の仕事はうそ話を作ることである」「ラブレターを書く男は一人居ればいいのである」……。
私の「佐野洋子」観は、やはり絵よりエッセーからきている。一度、結婚・離婚を経験したあと、52歳で59歳の詩人谷川俊太郎と再婚し、6年後には離婚する。そのころから、雑誌などに載るエッセーを読みはじめ、毒も滋味もある文筆家という印象を持ってきた。
実際、「エッセイスト」としての佐野洋子ファンは、豪快・痛快・毒舌・辛口といった文体の裏側に、ユーモアや真摯さをも感じ取っている。
トークイベントでは、本のタイトルのユニークさが取り上げられた。「タイトル名人だった」という。「ふつうがえらい」「死ぬ気まんまん」など、担当編集者が彼女一流の言語感覚について語り、長男がそれを肯定した。
エッセーの中身については、「盛る」ことがあったという。エッセーに登場する彼女の妹は「ウソばっかり書いている」とぼやいていたそうだ。その意味では「虚実皮膜」の間で踊る人でもあったのだろう。エッセーだけでなく、小説も戯曲も書いたのはそのことを物語る。
わが家には『ふつうがえらい』と、佐野洋子・絵の谷川俊太郎詩集『女に』がある。後者は2人が結婚した翌年に発行された。
カミサンは、今回、『佐野洋子とっておき作品集』(筑摩書房、2021年)=写真=を買った。刈谷さんが未収録作品を探し集めて本にした。
なかで親友の詩人工藤直子の「悪口」を書いている。2人は共同で本を何冊か出している。文学館で佐野洋子展が開かれるのは2回目ではないか――最初、そう誤解したが、それは2009年夏に開かれた「くどうなおこの『のはらうた』展」とごっちゃにしていたからだった。
2人は気質的に似たところがある。それが誤解のもとだが、工藤の詩「かまきりりゅうじ」を読み返すと、誤解するのも当然という気持ちになってくる。
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