2022年8月14日日曜日

セミとアブ

        
 台風8号は伊豆半島に上陸したあと東進し、茨城県南部で太平洋に抜けた。きのう(8月13日)の予報からはずいぶん南を通過したことになる。14日午前3時現在、いわき市の東方はるか沖を北上中だという。静かな夜が明けたことに、まずはホッとする。

 さて、普通に暑い日々は家の窓と戸を全開する。さすがに夜は不用心なので、寝るときに1階の窓と戸を閉める。2階は開け放したままだ。

寝床では電気スタンドをつけて本を読む。といっても、ほぼ毎日、明かりを消す前に睡魔が降りてくる。みごとなほど早くくる。

朝まで熟睡する体力はない。3~4時間たつと、いったん目が覚める。明かりはついたままだ。本を読みながら、また睡魔が降りるのを待つ。

というわけで、寝床の電気スタンドは明かりがともっている時間の方が長い。蚊取りマットがあるので、蚊に悩まされることはない。が、それをものともしないコガネムシや蝉がどこからともなく現れ、スタンドの周りで羽音を響かせる。額に止まったり、腕をはいずり回ったりする。

あるときは、アブラゼミが現れて枕元に積んだ本の上に止まった。すると、次にシオヤアブの雄がやって来た。こちらは最近知った肉食性のアブだ。

このごろ、昼間からちょくちょく茶の間の蛍光灯に来て、笠や蛍光管に触れてバタバタやっている虫がいる。尾っぽの先端に白い毛束がついている。

写真を撮って、ネットで検索したら、シオヤアブの雄とわかった。雌には12年も前に、夏井川渓谷の隠居で出合っていた。先日、そのときのブログを紹介した。

やはり今ごろ、土いじりを切り上げて隠居で休んでいたら、アブらしいものが二ホンミツバチを押さえつけ、背中から太い針を差し込んで体液を吸い尽くした目撃記録だ。

そんなことを思い出しながら、夢うつつのままシオヤアブの動きを追っていると、一瞬、アブラゼミの背中に乗っかったように見えた。「セミの体液を吸う肉食アブ」の写真が撮れたら「大スクープ」だ。

とたんに、ガバッと起き上がって、茶の間へカメラを取りに行く。寝床に戻ると、アブラゼミに焦点を合わせてパチリとやった。

ん、シオヤアブは? 最初、薄暗くてよくわからなかったのだが、シオヤアブはアブラゼミの背中にはいなかった。結局、アブラゼミがじっとこちらを見ている写真を撮っただけだった=写真。

一連の様子をカミサンが見ていたらしい。自分の寝床にカメラを持ち込んで何をしているのだろう、とうとう始まったか――。朝になってそんなことを言われた。

大スクープ写真は幻と消えたが、アブラゼミの「つぶらな瞳」とじっくり向かい合い、記録に残すことができたのはよかった、そういう無駄を積み重ねないと特ダネにはたどり着けないのだと、自分に言い聞かせながら、また睡魔がくるのを待った。

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