2022年8月18日木曜日

工事見積書

                      
 7月初めに夏井川渓谷の隠居と道路を仕切る柵(囲い塀)が壊された。朝早く、近所のTさんから電話があった。「車が突っ込んだようだ」。朝食前に夫婦で出かけ、様子を見た。

番線(針金)と笠木を渡した丸太の支柱十数本がなぎ倒されていた=写真。どこのだれが事故を起こしたのかは、むろんわからない。が、遺留品があるはずだ。柵に沿ってチェックすると、敷地内の草むらに車の左サイドミラーが落ちていた。

 警察に連絡をし、日曜日に現場検証が行われた。交通警官はサイドミラーなどを回収し、Tさんからも話を聞いた。

 「ここらへんで防犯カメラがあるところ、というと?」「市の川前支所にあるかどうか」。防犯カメラがあれば捜査がしやすい。なくても、必ず事故を起こした車を突き止める、時間はかかるかもしれないが――安心して結果を待つことにした。

 それからざっと3週間。またTさんから電話があった。事故を起こした女性がTさんの家を訪ねて、わが家の連絡先を聞いた。「電話番号を教えてもいいか」という。「どうぞ、どうぞ」

 ほどなく女性から電話がかかってきた。「警察が来てコトの重大さを認識した。イノシシが急に現れてハンドルを切ったら、柵にぶつかった。すぐ家を訪ねたが、空き家だった」

 確かに日曜日以外、隠居はもぬけの殻だ。空き家には違いない。でも、「日曜日はいる」。さらに「柵はそちらの責任で直してもらうから」という話をして電話を切った。

 それから少したって、警察と保険会社から連絡がきた。内容は偶然、同じだった。「工事見積書が欲しい」

 前に柵の工事をした知り合いの大工氏に見積もってもらい、まず保険会社にファクスで見積書を送信した。

 諸物価が高騰している。8月着工ならこの値段だが、遅れるとまた材料が値上がりする――と言われていたので、ファクスでは大工氏のケータイ番号を添えてその旨付け加えた。

 すると、さっそく大工氏のもとに連絡があったそうだ。あとは大工氏と保険会社が直接やりとりをすることになる。

 警察に連絡すると、もう一方の当事者である私から「供述調書」をとらないといけないので、工事見積書はそのときに――という回答だった。

アカヤシオ(岩ツツジ)が咲く春と、紅葉が美しい秋は、行楽客が絶えない。なかには敷地に勝手に入り込んで写真を撮る。私有地であることをわかってもらう意味も込めて、だいぶ前に柵を設けた。

柵は丸太を支柱に、一番上を笠木でつなぎ、太い番線を3本、横に張ったものだ。たぶんイノシシだって柵をくぐることも、飛び越えることもできないだろう。

イノシシが出没する話は聞くが、まだ目撃したことはない。よりによって山側から道路に現れて、女性が驚いてハンドル操作を誤ったということになる。それを信じるしかない。

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