2023年3月9日木曜日

文化施設を森からまちへ

                     
 そうだった、いわき市の文化施策が劇的に転換したのだった。正確に言えば、郊外の「21世紀の森」に建設を予定していた「文化ホール」や「総合型図書館」などをまちなか(中心市街地)へ持って来る――。

平成9(1997)年から2期8年間、いわき市長を務めた四家啓助さんが3月2日、死去した。享年88。訃報に接して真っ先に思い浮かんだのが、この文化施設のまちなか回帰だった。

 「文化ホール」は市庁舎の東隣、旧平市民会館跡にいわき芸術文化交流館「アリオス」として建設された。総合型図書館もまた、いわき駅前にできた再開発ビル「ラトブ」の中核施設としてオープンした。

 いわき民報の追悼記事=写真=を読んで、四家市長時代のあれこれがよみがえった。なかでも総合型図書館については、私も市民による整備検討懇談会に加わり、自由に議論して四家市長に提言したので、感慨深いものがある。

 記憶を整理するためにネットで資料に当たった。総合図書館でちょうど、開館15周年を記念した令和4年度後期常設展「いわきの図書館――はじまりから今へ」が開かれている。

 その資料に総合図書館オープンまでの経過が記されている。それも読んでずいぶん記憶が鮮明になった。

 当初、21世紀の森に建設が予定されていたのは、バブル景気が地方財政を潤していたためでもあった。しかし、バブルが崩壊する。中心市街地の空洞化も大きな問題になっていた。

そうした社会経済環境の変化から文化施設の見直しが進められ、森からまちなかへという流れが生まれた。

 平成13(2001)年7月、市民=学識経験者などからなる「いわき市総合型図書館整備検討懇談会」が発足し、翌年3月、市長に提言書を提出した。

平成19(2007)年10月25日、いわき駅前に8階建ての再開発ビル「ラトブ」がオープンする。その4~5階に総合図書館が入居した。

同ビル6階のいわき産業創造館に起業家を支援する「インキュベートルーム」がある。若い仲間がオープンと同時に、「ネット古書店」として入居した。

 たまたまラトブの開業日が、会社をやめてフリーになった初日だった。若い仲間に誘われてインキュベートルームの同居人になった。前職のからみで回ってきた仕事があった。

毎日、階下の総合図書館に通い、資料を探し、若い仲間に手伝ってもらって本を2冊つくった。取材・編集代行業のようなものだった。

そのなかで、3期目を目指しながらも選挙で敗退した四家前市長に、中心市街地の再開発事業についてインタビューをした。

 1期目では平一町目再開発事業、2期目ではいわき駅前再開発事業が動き出す。市長は「機が熟したから」と語ったが、やはり政治家として不退転の決意があったからこそ事業は前進したのだろう。

 インタビューは豊間の沿岸部にある自宅で行われた。東日本大震災ではその自宅が流された。死亡記事で自宅が「中央台」とあるのを知って、胸の詰まる思いがした。

0 件のコメント: