岸辺のヤナギが芽吹いたと思ったら、ハクチョウが姿を消した。いちだんと春の気配が濃くなっているのだが……。夏井川の堤防を通っても、まだ対岸・山崎からウグイスのさえずりが聞こえない。
ブログにウグイスの初音の記録が残っている。平成21(2009)年には同じ堤防で2月26日に聞いた。まず「谷渡り」(「ケキョ、ケキョ、ケキョ」)が響き、すぐ「ホー、ホケキョ」が届いた。
2月中に初音を聞くのは珍しい。東北で一番早く春が訪れるいわき市とはいえ、ウグイスがさえずり始めるのはおおむね3月になってからだ。同20年がそうだった。同じ場所で3月7日に初音を聞いた。
小名浜測候所に職員がいて、「生物季節観測」をしていたころは、小名浜でのウグイス初鳴日(平年値)は3月17日だった。
今は少し早くなっている印象がある。夏井川渓谷に住む友人は今年(2023年)、3月12日にウグイスの初鳴を聞いた。もう渓谷まで「ウグイス前線」が到達したのだ。
なぜ、夏井川の平・塩~中神谷地内では遅いのか。対岸の平・北白土~山崎地内で盛んに河川敷の土砂除去工事が行われているからだろう。
岸辺にヤナギが茂り、草で覆われていた河川敷は、どこもグラウンドのように土がむき出しになっている。
なかでも中神谷字調練場の対岸、山崎字小才内では護岸工事が進められている。河口までおよそ5キロという平野部なので、川はあちこちで大きく蛇行する。ここも右岸(小才内)は堤防のすぐそばでカーブし、左岸(調練場)には広大な砂地が広がっている。堤防の方に土砂が寄せられているところを見ると、護岸の基礎を強化する工事が行われているようだ。
というわけで、里の春を告げるウグイスも岸辺には近づけないのだろう。このままいくと、わが生活圏ではウグイスの初音よりツバメの初見が早いかもしれない。
それはさておき、今年はハマの春には恵まれた。後輩がマツモを持って来てくれた。先日はワカメが届いた。
いわき地域学會が市から委託されてまとめた『いわき市伝統郷土食調査報告書』には、マツモは①冬から春によく繁殖する②早春の出始めが美味③磯のちょっと高い岩場に生息する――とある。
ワカメについてはこうあった。「マツモは成長しすぎると味が落ちる。代わって登場するのはワカメである。枝のない一葉ワカメと浜で呼ぶ小さなワカメは、マツモと同様、味噌汁・酢味噌和えに向いている」
さっそく湯がいて酢の物にした=写真。軟らかい。別の日にはもちろん味噌汁、そしてうどんの具になって出てきた。これもまたハマの春の味だ。そんなときに、ウグイスが庭に現れて、「ホー、ホケキョ」とやってくれれば最高なのだが……。
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