2023年3月18日土曜日

甕の中の白い膜

                      
 この冬は11月下旬に白菜漬けを始めた。いつもよりはちょっと早かったかもしれない。まずは山間部の三和の白菜を――というわけで、国道49号をかけあがり、ふれあい市場で2玉を買った。それから差塩(さいそ)~川前と山越えをして、夏井川渓谷の隠居へ行って土いじりをした。

 帰りに、田村郡小野町のNさんが晩秋だけ開くJR磐越東線江田駅前の直売所に寄ると、曲がりネギだけでなく白菜も売っていた。ここでも2玉を買った。

 小野町と、隣接するいわき市三和町では、標高はそう違わない。まずは小野町の白菜を漬けた。1玉を8つに割る。2玉では16割りだ。

一切れが1日で消費されるときもあれば、2日持つときもある。2玉でだいたい3週間は持つ。進呈したものもあるので、この冬は、今食べているものも含めて11玉を漬けた。

 そのうちの1玉は巨大白菜だった。いわきの平地でカミサンのいとこがつくったものだという。普通の白菜より見た目で3割は大きい。

8つ割りにしただけでは甕(かめ)に収まらない。全体を10に割り、さらに幾つかは外側の葉と内側の葉を2つに分けて漬けた。

試食すると、意外や意外、やわらかくて甘い。平地の白菜のイメージを越えている。収穫したのは11月下旬。師走の寒気で糖分が増したわけではない。もともと糖分が高い品種だったか。

最初はその大きさを持て余したが、漬けて食べてみたら引かれた。来シーズンはもっと食べたい、そんな思いがふくらむ。

さて、問題は産膜酵母である。白菜から上がった甕の水の表面が次第に白くなる。その発生が遅れるように、家の中で一番冷え込む階段下に甕を置く。猫を飼っていたとき、真夏にそこらへんで昼寝をしていた。それにヒントを得た。

今季は水分をたっぷり含んでいたためか、どの白菜も水の上がりが早かった。塩分の浸透圧もそれなりにうまくいった。

が、やはり何日かすると水の表面が白く濁ってくる。塩分濃度が低かったり、室温が高かったりすると発生しやすいというから、これはしかたがない。甕から取り出してサッと水で産膜を流せば、普通の白菜漬けとして食べられる。

白菜自身も乳酸発酵をする。古漬けが好みのカミサンは、酸味が加わった白菜漬けがうまいという。

3月になると、暖かい日も多くなる。もう糠床に切り替えようと思ったが、糠味噌の冷たさが頭をよぎった。

それで自分にムチを入れて、最後の白菜漬けをつくった=写真。これもすぐ水が上がったので、しんなりした段階でタッパー2つに入るだけの白菜を移して、冷蔵庫に保管した。

産膜酵母で白くなることはなかったが、発酵中の泡のようなものがタッパーにしみ出た水の中にあった。冷蔵庫に入れていても、時間とともに酸味は増すらしい。どうやら糠床に切り替えるときがきたようだ。

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