2023年3月21日火曜日

「三春」以上

                      
 3月12日の日曜日は午後、いわき新舞子ハイツで防災研修会が開かれた。自主防災組織の代表や「登録防災士」が参加した。テーマは「地域防災力向上研修――東日本大震災・福島第一原発事故を振り返って」だった。それで、夏井川渓谷の隠居へ行くのは中止した。

 次の週は土曜日(3月18日)、渓谷の集落で寄り合いがあった。それに出た。ほぼ2週間ぶりの渓谷行だ。あいにくの雨で、土いじりも、ブラブラ歩きもできなかった。

 が、隠居までの道沿いには春の息吹が感じられた。家々の庭に花をつけた木がある。白梅は残花。通り過ぎるだけなので、黄色っぽい花が何なのか、ピンクの花が何なのかは、定かではない。

 とにかくこの2週間のうちに、大地のそこかしこから春が立ち上がってきた、そんな感じを受ける。わが家の庭をみると、それがよくわかる。

 植物たちが地面から生え出て、日ごとに緑の領域を広げている。スイセン、ヒメオドリコソウ、ホトケノザ、スミレ、クリスマスローズの花が咲き、パセリの葉がこんもりしてきた。

 渓谷ではヤブツバキの赤が燃え、ヤシャブシとキブシが花を垂らしていた。マンサクはもう満開のようだった。

 気になるのはなんといっても、渓谷の春を象徴するアカヤシオ(岩ツツジ)。日曜日(3月19日)のブログにも書いたが、土曜日の寄り合いの際、対岸の急斜面に1カ所、アカヤシオのピンクの花が目に入った。

アカヤシオは、渓谷ではおおむね4月に入ってから開花する。最も早いときで「春分の日」あたりに咲くという。その意味では、今年(2023年)は最速の部類に入る。

滝桜で知られる田村郡三春町の「三春」は、梅・桃・桜が一緒に咲くことに由来する。冬枯れの山野が、里が春になると花でいっぱいになる――いかにも桃源郷的なイメージだが、その場合の桜は、ソメイヨシノではなくてヤマザクラだろう。

 二十数年前、渓谷へ通いはじめたころ、集落の長老に教えられた。「ここは『五春』だよ」。梅、ハナモモ、アカヤシオ、ヤマザクラ、ソメイヨシノが時を重ねるようにして咲く。「三春」以上というわけだ。

 今は気象庁が標準木にしているせいか、ソメイヨシノが春のシンボルに変わった。が、渓谷では真っ先に急斜面を彩るアカヤシオが「春を告げる花」だ。これは昔も今も、もちろん未来も変わらないだろう。

 平地ではすでにハクモクレンが咲き、木によっては花を散らしている。わが家の庭のプラムはどうか。土曜日の夕方、雨上がりに見ると、つぼみが膨らみ、白い花弁をのぞかせていた=写真。

 アカヤシオやソメイヨシノと違って、庭のプラムは身近すぎていつもノーマークだったが、早いと3月下旬には咲き出す。まさに開花直前というところだ(20日夕方に見ると、3輪が開花していた)。

三春・五春・十春、いや、おおげさにいうと「百(もも)の春」。温暖化もあるので、単純には喜べないが、春は駆け足でやってきた。

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