2023年3月12日日曜日

袋中上人と招き猫

                                
 「またか」となるかもしれないが、これ(読書日記のようなもの)もブログのルーティンの一つなのでお許しあれ。

 いわき駅前再開発ビル「ラトブ」の総合図書館へ行くと、必ず新着図書コーナーをチェックする。借りる・借りない――は、ほかの新着図書との兼ね合いで決める。何冊も新着図書を借りるわけにはいかないからだ。

 ジャンルからいうと、文学、ジャーナリズム、菌類(キノコ)、動植物、ウクライナ戦争などに目が留まる。長年、興味・関心を持っているものだけでなく、時事的なものも、タイトルを見て借りるかどうかを判断する。

 遠藤薫『<猫>の社会学――猫から見る日本の近世~現代』(勁草書房、2023年)=写真=は、ペットの猫が主題だ。息抜きを兼ねて「読んでみるか」となった。

 読み始めるとすぐ、郡山市の遺跡から出土した縄文時代の「ネコ形土製品」の話が出てくる。ネコかどうかはともかく、「ネコ形」だということで取り上げたようだ。

 最近、ネコ形土製品の愛称を募集する記事があった。ネットで確かめると、郡山市のネコ形土製品のことだった。

 同市内の遺跡で見つかった出土品の一部を管理・展示している施設がある。平成12(2000)年に見つかったネコ形土製品もその一つで、今年(2023年)1月に愛称を募集した。

 土製品は、高さ4.1センチ、幅5.6センチ、厚み4.3センチと、手のひらに収まるサイズだ。ずんぐりしていて、小さなとんがりが二つ付いている。このとんがりがネコの耳を連想させるのだろう。

 国内外から3802点の応募があり、「ネコの日」である2月22日に結果が発表された。愛称は「じょもにゃん」。いかにもそれらしい作品が選ばれた。

 ネコの本に戻る。後半に袋中上人(1552~1639年)と招き猫の話が出てくる。全く知らなかった。

袋中は、今のいわき市で生まれ育った浄土宗の学僧だ。関ヶ原の戦いのあと、いわき地方を治めていた岩城氏が除封される。その激変のなかで袋中もふるさとを去り、中国で仏教を学ぼうとしたがならず、琉球へ渡って浄土宗を伝え、沖縄初の史書「琉球神道記」を著した。

袋中は帰国すると、京都に檀王法林寺を開き、「主夜神(しゅやじん)」をまつる。この主夜神の使者が黒猫だと、寺は伝える。

同寺のホームページによれば、江戸時代の中ごろから、主夜神尊の銘を刻んだ招福猫がつくられるようになった。日本最古の伝承を持つ黒招き猫――私のなかでは「新発見」だった。

同書では竹久夢二の「黒船屋」(黄八丈の着物を着た女性が黒猫を抱いている絵)も紹介されている。前に「黒船屋」の解説を読んで、西洋では船に黒猫を飼う話を知った。ネズミ対策だ。

それと同じ話が袋中と黒猫にも登場する。彼が琉球へ渡るとき、船で飼われていた黒猫をかわいがっていたのではないかという。航海に共通する話だが、実際はどうだったのだろう。あとで袋中研究者に聞いてみよう。

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