もう今シーズンは漬けるのを終えようかと思ったが、まだ3月が始まったばかりだ。道の駅よつくら港へ白菜を買いに行った。つなぎの味噌漬け、白菜キムチなども買った。
水道管が凍結するような酷寒の日もあったが、立春から1カ月もたってみれば、いわきの冬はおおむね穏やかに過ぎたことがわかる。
夏井川渓谷の隠居の対岸に「木守の滝」がある。極寒期にはしぶき氷が発達する。その一部をかち割って持ち帰り、夏まで隠居の冷蔵庫に保管しておく。
江戸時代には旧暦6月1日、加賀藩が氷室を開いて将軍家に氷を献上した。その故事にならって、現代では「6月30日氷室開き」「7月1日氷室の日」とされている。
現役のころは土曜日、隠居に一泊して翌日曜日に森を巡り、土いじりをした。6月末になると、夜、冷蔵庫から滝の氷を取り出し、ひとり「氷室開き」をして、オンザロックを楽しんだ。
このしぶき氷が温暖化の影響であまり成長しなくなった。今シーズンは最初から天然氷の回収をあきらめた。
寒さが持続しないという点では、白菜漬けにも悪影響が現れる。漬けるとすぐ水が上がる。その水に産膜酵母が張る。
それで、家の中でも一番ひんやりしている階段下の空きスペースに白菜を漬けた甕を置いている。それでも屋内であることに変わりはない。
1月、2月、3月と暦が替わるたびに白い膜の出現が早まり、その層が厚くなる。2月に漬けた白菜が食べごろになると、すぐ産膜酵母に覆われた。それもあって、暖冬の今シーズンは終了、という思いになったのだが……。
冬眠中の糠床をおこすにはまだ冷たすぎる。ではもう1回、白菜を漬けるか、と自分にムチを入れて道の駅へ車を走らせたのだった。
白菜を八つに割って軒下に干すとき、空中を漂っているスギ花粉に思いが走った。庭に止めておいた車が、屋根もガラスもボンネットも点々と汚れている。フロントガラスの縁は、それらがたまって黄色くなっていた。
庭のスイセンが咲き、ジンチョウゲも開花した。その両方が茶の間の花瓶に差してある=写真。そばを通ると、ジンチョウゲのいい香りがする。
スギもまた同じように開花時期に入った。こちらはしかし、風媒花だ。花粉を飛ばして受粉する。先日、花粉の飛散状況を目撃した。ものすごい量の花粉が煙幕となってスギ林を飛んでいた。
それでいわきでは、今年(2023年)一気にスギ花粉が飛散し始めたことを知った。「薬を飲んだ」「車が黄色くなっていた」。人に会うと、花粉症の話になる。
庭のジンチョウゲの花が満開になると、山ではスギ花粉が飛び始める――。それを教訓にして、軒下の白菜をいつもより早い時間に取り込み、甕に漬け込んだ。
翌日にはもう水が上がった。漬け込みは順調だ。が、産膜酵母がすぐ張る。白菜が漬かったら早めに冷蔵庫へ避難させるとしよう。
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