2019年5月3日金曜日

庭のエビネの花

 朝は庭に出て、歯を磨きながら地べたに目を凝らす。つる性植物のヤブガラシが次々に赤い芽を出す。大事になる(ほかの植物にからまり、葉を覆って枯らす)前に芽を摘む――と決めた。摘んでも、摘んでも出てくる。負けられない(1週間前にもこの話を書いた)。
 ついでに、エビネの花を眺める=写真上1。チラッと目をやるだけでも心が洗われる。

もう20年くらい前になるだろうか。ホームセンターからポットに入ったエビネを買ってきて、花が終わったあとに庭に植えた。地植えにしたのは増殖を期待してのことでもある。ほっといても毎年増えていくだろうともくろんだが、そうは問屋は卸さなかった。花茎を数えたら6本。それだけでよしとするしかない。

 若いころ、いわきの山野草を観察する“山学校”に参加していたことがある。それで知ったのだが、エビネは、かつては日本のどこでも普通に見られた。しかし、生息地の開発やマニアの盗掘などで絶滅が心配されるようになった。今も事情は変わらないだろう。

およそ30年前、盗掘は時間の問題――という報に接して、仲間でエビネの自生地を見に行ったことがある。ひそかにエビネを守っていた人の恐れはたちまち現実のものになった。数日後にはそこからエビネが姿を消した。

同じころ、たびたび通った里山で偶然、エビネを見つけた。そのままだとすぐ盗掘される。杉の枯れ葉をかぶせて“偽装”したが、効果はあったかどうか。あったとしてもその年だけだったろう。

庭のエビネの隣にはミョウガが生える。こちらは以前より芽生えが遅くなったような気がする。4月下旬にはミョウガタケが見られたのに、この2、3年は5月にずれこんでいる。おととい(5月1日)、やっと先端が現れたのを確認した。

10センチくらいに伸びたらカットし、刻んで味噌汁に散らす。おととし(2017年)は、カミサンが生け垣の剪定をしているうちに、ミョウガタケを踏んづけてしまった。同じ庭でも見ているものがまったく違う。
 植物だけではない。おととい(5月1日)は夏井川の河川敷=写真上2=で「ギョギョシ、ギョギョゴシ」を初めて聞いた。夏鳥のオオヨシキリがいわきへ渡ってきた。

「花鳥風月」とはよくいったもので、花と鳥からはストレートに自然の移り行きを実感できる。しこった心がほぐれ、やさしくなれる。それこそが花鳥のもつ力だろう。

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