といっても、シロヤシオは毎年咲くわけではない。いつも期待しないでゴールデンウイークを迎える。と、緑のキャンバスに白い点々が見えるときがある。今年(2019年)がそうだった。
4月最後の日曜日、渓谷の隠居の対岸に白いものが見えた。双眼鏡で確認すると、シロヤシオだった。今年は「咲き年」か。
先週の土曜日(5月4日)午後、時間をつくって隠居へ出かけた。シロヤシオの花が、数は少ないが点々と咲いていた。すると、前の日曜日に咲き始めを確認した谷間のシロヤシオは満開かもしれない。その通りだった=写真。
この木は「マイ・シロヤシオ」である。岸辺の岩盤に根を張り、天に向かって伸びた幹から枝葉が川になだれるように垂れて花が咲いている。
渓谷を縫う県道小野四倉線の対岸にある。ドライバーはもちろん、歩行者も、ただ歩いているだけでは木々に遮られていて気づかない。まともに対面するには、ガードレールをまたいで谷を下り、岸辺に出る必要がある。しかし、そんな“冒険”はもうしない。木の間越しでも白いウエディングドレスをまとったような清楚さがある。
半世紀近く渓谷へ通っていると、「面」だけでなく、それを構成する「点」が見えてくる。キノコのアミガサタケなら隠居の庭の枝垂れ桜の木の下、マメダンゴ(ツチグリ幼菌)なら玄関前の駐車スペース、キクザキイチゲとクサソテツ(方言名コゴミ)なら隠居の下の小流れ‥‥。それらはすべて食慾とつながっている。
アカヤシオからシロヤシオまでの萌えの季節、この時期は舌よりも目が喜ぶ。現に、隠居の庭のタラボと小流れのコゴミはそのままにしておいた(コゴミはしかし、誰かに摘まれただろうが)。もう初夏(5月6日に立夏を迎えた)である。
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