2019年5月31日金曜日

クロソイドの乙女像

 ずいぶん昔のことだが、勤めていた新聞に寄稿した高校の地理の先生のエッセーで、「道路はクロソイド曲線でつくられている」ことを知った。
以来、地形的に急カーブの連続する渓谷や山地はともかく、平地ではクロソイド曲線に従ってゆるやかにカーブさせる、という道路思想を感じながらハンドルを握るようになった。高速道のインターチェンジも、減速しながら回って一般道路に接する、という意味ではクロソイドだろう。

いちおうウィキペディアにあたってみる。クロソイド曲線はイタリアの数学者が名づけた「緩和曲線」のことで、曲率を一定割合で変化させていった場合に描かれる軌跡を指す。ドイツのアウトバーンは、この曲線に従って建設されたという。

昔の写真を調べる機会があった。そのなかで『磐城国道四十年記念写真集』(磐城国道事務所、平成元年)をパラパラやっていたら、「歴代所長の思い出を語る座談会」のなかに、クロソイド曲線が出てきた。

昭和30年代後半の所長。国道6号に関して、「原町まで全部クロソイドで一発全線測量をした」という。さらに、いわき市内のバイパスの起点、四沢交差点に「ブロンズ像があります。私(注・昭和50年代前半の所長、いわき出身)は『クロソイドの乙女』と名を付けたのです」。

その次の所長。「一次改築で全線クロソイドを使っているということは、まるで高速道路と同じような気がして、そういう意味で非常にストックとして立派なものを造られたということで、今日に至るまで十分機能を果たしている」

 ネットで検索すると、同事務所平維持出張所が広報紙(平成28年6月3日発行)で「クロソイドの乙女像」を紹介していた。「クロソイド曲線は、道路を設計する際に、カーブをスムーズなハンドル操作で曲がることができるようにするために用いられるもので、これにちなんで製作された」とあった。

 5月初め、勿来関文学歴史館へ行った帰り、今は国道6号に替わった旧バイパス四沢交差点を過ぎてすぐの緑地に立つ乙女像を、助手席のカミサンに頼んでパチリとやってもらった=写真。製作者はだれなのか。わが家の近くの終点「草野の森」にも、「未来の風の乙女像」というタイトルの銅像が建つ。こちらは、作者はわかっている。

クロソイド曲線を念頭に道路をつくる技術屋さんの誇りというか、道路愛のようなものが、二つの銅像から伝わってくる。

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