1本は8月13日放送の「いわき市にある慰霊碑 知られざる軍馬の歴史」=写真上。遠野町にある「軍馬戦没慰霊碑」にまつわる物語を掘り起こした。
先のアジア・太平洋戦争中、歩兵第85連隊(会津若松)で馬を使って弾薬などを運んだ兵士がいる。その一人、遠野町の折笠章さんが復員後、何度も「夢枕に馬が出てくる。供養してやらないとだめだ」と、同じ部隊にいた仲間たちと一緒に軍馬の慰霊碑を建てる。折笠さんの甥や地元の識者、みやぎの近現代史を考える会の長谷川栄子さんらにインタビューして番組をつくった。
もう1本は15日の「終戦直後にBー29 いわきの捕虜収容所」=写真下。好間の捕虜収容所に救援物資を投下しようと飛来したBー29が濃霧のために針路を誤り、現いわき市内郷白水町地内の湯ノ岳中腹に激突する。前半にそれを紹介し、後半に好間の捕虜収容所の暮らしや、落盤事故が相次いだ炭鉱労働の様子などを伝える。事故を目撃した渡辺為雄みろく沢炭鉱資料館長らが登場した。
古河好間炭鉱の捕虜収容所については、POW(プリズナー・オブ・ウォー=戦争捕虜)研究会事務局長・笹本妙子さんのレポートが詳しい。吉野せいの『洟をたらした神』に収められている「麦と松のツリーと」も引用し、さらに通訳N氏の娘さんから提供された当時の写真も掲載して詳細を極める。
その写真だけでなく、笹本さん自身にもインタビューして、番組の内容が深みを増した。個人的に『洟をたらした神』の注釈づくりをしているので、「麦と松のツリーと」の注釈に、この番組名も付け加えよう。
笹本さんは調査の過程で「(元捕虜から)会うことができないと断られた。激しい憎しみを持っている人がいるなんて知らなかった」と、戦後も苦しんでいた捕虜がいることを明かす。番組は「戦争の記憶に苦しんでいる人が世界中にいる」ということばで終わる。「戦後」が「戦前」にならないことを祈るばかりだ。
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