ネギは砂漠生まれ。乾燥には強いが、湿気には弱い。地下水位が高かったり、作土が少なかったりする土地では、ネギの白根(葉鞘)を長くするためにヤトイをする。須賀川の「源吾ネギ」、郡山の「阿久津曲がりネギ」、仙台の「曲がりネギ」がそうだ。
渓谷の小集落で栽培されている三春ネギは、夏井川の最上流、田村郡から伝来した。「阿久津曲がりネギ」と地続きの同郡(田村市も含む)では、8月中旬、定植したネギを掘り起こしてヤトイをする。今年(2019年)はそれにならった。ならわざるをえなかった。
今年の梅雨は日照不足と長雨で土中の湿気が高まり、ネギの根が酸欠状態になってかなりとろけた。晩春に300本を定植したのが、掘り起こして数えたら70本、4分の1に減っていた。
8月に入ると一転、猛暑が続いたが、月遅れ盆が過ぎたらまた曇雨天が戻ってきた。このままほうっておくと、ネギは全滅しかねない。
植物は一般にまっすぐ天をめざしてのびる。斜めに植えられたネギは、葉が天をめざす。自然と曲がりネギになる。曲げることには別の意味もある。ネギにとってはストレスがかかることから、それに負けまいと糖分を蓄える。つまり、甘みが増す。
隠居の庭は盛り土をしてつくられたとはいえ、すり鉢の底のようなところに位置している。地中に水がたまりやすい。ネギの栽培を始めてからずっと、田村地方にならってヤトイをしていたが、ネギの苗と種を分けてくれたおばちゃんに聞くと、曲がりネギにはしない、という。する必要もなかった。畑は斜面にある。土に浸み込んだ雨はすぐ下方へ去る。
ヤトイを省略してまっすぐな三春ネギにできるなら、それにこしたことはない。手抜きをした3年間は天気がまあまあだったので、作柄を気にする必要はなかった。が、今年は梅雨にやられた。今朝も雨。森のキノコにはいいが、畑のネギにはよろしくない。
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