2019年8月8日木曜日

大きな玉石、なぜそこに

 手前にあるカラーコーンは、高さが70センチ。その3倍どころか、4倍近くある。直径2.5メートル前後の大きな玉石が、でんとそこに置かれてある=写真。ダンプカーが運んできた? 掘ったら出てきた? 週に1回、そばを通るたびに不思議な気持ちになる。
 
 そこは、渓谷を下ってきた夏井川が間もなく平野部に出るあたり、いわき市小川町上小川字高崎地内の土木工事現場だ。まだ平野部よりは一段高い。夏井川と県道小野四倉線、JR磐越東線の間に水田が細く長く伸びる。上流側3分の1ほどの田んぼが去年(2018年)、「広域農道」をつくるために土砂で埋められた。その工事の過程で巨岩がはじっこに据えられた。

工事を告げる看板には「【復興】広域農道整備」「新しい農道を造っています」「新しい橋を造っています」といった文字がおどる。

高崎に近い二ツ箭山中に、四倉の上岡地区から始まり、小川の福岡地区で終わる道路がある。それが「広域農道」。四倉側の「上岡トンネル」は、完成してはいるが通行はできない。小川側も、高崎近くで尻切れトンボになっている。なんとも中途半端な“天空のハイウエー”だ。

「予算の切れ目が事業の切れ目」だったところに、東日本大震災が起きた。広域農道もどこかで被害が出たのかどうか、復興予算がついた。広域農道であるからには、福岡から高崎へと伸ばし、県道につなげる工事をして完成させる、ということなのだろう。橋はつまり、跨線・跨道橋。

 それより、なぜ巨岩がそこにあるのか、だ。確かに土砂はよそから運ばれてきた。でも、わざわざ巨岩をダンプカーに積んでくるだろうか。立体橋の基盤づくりのために田んぼを掘り起こすと巨岩が現れた。工事の邪魔になる。で、ワイヤロープをひっかけて、クレーン車ではじっこに移動した、ということではないのか(あくまでも推測)。

吉野せいの作品集『洟をたらした神』の舞台、好間・菊竹山の地質・地形を調べるため、街の古本屋から『土地分類基本調査 平』(福島県、1994年)というものを買った。夏井川流域のうち、北は渓谷の江田、東は新舞子浜、南は常磐・水野谷、西は三和町渡戸を範囲にした地形分類、傾斜区分、表層地質、土壌、土地利用現況の五つの地図が添付されている。

地形分類図を見ると、集落のある高崎は河岸段丘、水田は上流からもたらされた堆積物によってできた谷底(こくてい)平野だ。田んぼの地中深く、巨礫=巨岩があってもおかしくない。

水田のそばを流れる夏井川自体、河原に石がごろごろしている。上流の渓谷は、それこそ大きな玉石だらけだ。橋と道路が完成したら、巨礫をモニュメントに生かしたらいい。

ついでながら――。わが家は下流の平地・神谷にある。地形分類図では、家が建っているところは、前の道路を含めて夏井川の旧河道、向かい側は谷底平野だ。大雨が降るとわが家の前の歩道はたちまち冠水する。旧河道と関係するのかどうか、考える材料が増えた。

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