それからざっと40年。オーナーは去年(2018年)、73歳で亡くなった。2人の娘のうち、下のハナちゃんが入院中の父親からカレーのレシピを聞き取り、受け継いで、通夜の客にふるまった。
ふだんは家庭の主婦をしている。が、週末にはドージーを開けてカレーを提供していると、あとで本人から聞いた。平日だが、七夕は書き入れ時だ。フェイスブックで告知していたので、ここは買いに行かねばと、七夕見物を兼ねてカミサンを誘った。
平の目抜き通りは交通規制が敷かれている。図書館のあるラトブの地下駐車場はあきらめ、いわき駅西の市営駐車場を利用した。たまたま並ばずにすんだ。本を借りると、あとは七夕飾りを見て、カレーを買って帰るだけ。まだ明るいなかを人の波に加わった。
笹飾りが並ぶ目抜き通りを、中・高校生らしい若者がぞろぞろ歩いている。火曜日、宵の6時。家族連れの数はそれほどでもない。ひところに比べると飾りも貧弱だ。
カレーは、通りではなく、3階の店の中で売っていた。「やぁ」「オジチャン、オバチャン!」。店を訪ねるのはざっと20年ぶりだろうか。テーブルに、オーナーの顔写真を立てた小さなプレートが置かれていた。「ゴローさん、久しぶり」。お客さんがあるときは別のところに移すのだという。
天井近くにカラオケのモニターテレビがいくつもセットされている。床は少しきしんで、年月を感じさせた。主にグループで飲み食いしながら、カラオケを楽しむ――という店のスタイルは変わっていない。
カレーはどんな味かな。1年半前の通夜の席で食べたのと同じだった。舌が真っ先に甘みに反応し、遅れてまろやかな辛みが広がる。コクのある「ドージーのカレー」だ。しかし、これはご飯あっての辛口だろう。けさは、朝からカレーライスにした。
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