2020年12月1日火曜日

「田村のネギ」を初収穫

                     
   おととい(11月29日)の日曜日、2週間ぶりに夏井川渓谷の隠居へ行くと、周りはすっかり冬の装いに変わっていた=写真上1。広葉樹はとっくに葉を落とし、そのあとに映えるカエデの赤もあらかた消えた。

紅葉シーズンの日曜日、JR磐越東線江田駅前の道端でトロロイモとゴボウの直売所を開いてきた小野町のNさんは、鉄パイプの小屋の骨組みを解体して撤収するところだった。

その手前、急カーブを過ぎると、小学生と思われる子と祖父の2人組が道路を歩いている。近くに「水戸」ナンバーの車が止まっていた。

それからおよそ1時間半後。2人組が隠居の前の道に現れた。庭の畑でネギの苗床にもみ殻をまいていると、おじいさんから声がかかった。「タマネギですか?」「いや、長ネギです。いわきの平地では春に種をまきますが、ここでは秋まきです」。標高が高いから――おじいさんは左手を下におき、右手を上げて標高差を表現した。

そのあと、おずおずと「紅葉は?」と聞く。「広葉樹の紅葉が終わったあとにカエデの紅葉が始まります。でも、それも終わりですね」「上の方は?」「そっちはもうないです」。それでやっと納得したようだった。燃え上がる赤を求めて、少しずつ上流へ上流へと車で移動してきたのだろう。

「5年ぶりに来たもんで」。そうか、孫にきれいなカエデの紅葉を見せたかったのだ、きっと。茨城県に住んでいても、いわきかその周辺に縁故のある人なのかもしれない。

 さて、きょうから師走。郡山市の伝統野菜「阿久津曲がりねぎ」は阿武隈川の右岸沿いで栽培されている。去年(2019年)は出荷を目前にした10月中旬、台風19号による大水で畑が冠水し、ネギが根腐れを起こした。それから1年――。ある農家は畑を高台に移して栽培を再開し、先日、収穫が始まったと、県紙が報じていた。

私は、夏井川渓谷の隠居で昔野菜(伝統野菜)の「三春ネギ」を栽培している。去年は長梅雨で根腐れを起こし、台風が来る前にあらかた姿を消した。種は種で冷蔵庫に保管していたものが湿って異臭を放ち、まいてはみたものの発芽しなかった。

冬が旬の「阿久津曲がりねぎ」は師走に入ると、いわきでもヨークベニマル(本社・郡山市)に並ぶ。去年は姿を見なかった。三春ネギも採種用を除いて口にすることができなかった。

田村市の実家の兄が私のブログを読んで連絡をよこした。ネギ苗を確保するというので、春にもらいに行った。立派な苗だった。

立派すぎたのか、隠居の畑に植えると間もなくネギ坊主ができた。それを摘まないと次の世代が伸びてこない。しかし、花茎に栄養を取られてしまったらしく、新しい苗は細いままだった。ネキリムシも育った苗の根元をたびたびちょん切った。300本以上あった苗はいつの間にか半分以下に減った。

「阿久津曲がりねぎ」の収穫が始まったという記事に触発されて、おととい、「田村のネギ」を初めて収穫した=写真上2。8月は猛暑で、曲がりネギにする「やとい」はしなかった。土寄せをしてまっすぐ育てた。それが旬を迎えた。

 きのう朝、2年ぶりに自産のネギとジャガイモのみそ汁を口にする。甘みと風味は期待したほどではなかったが、白根もあおい葉もやわらかい。曲げてストレスを与えると糖分が蓄積される。それをしなかったのだから、しかたがない。まずはやわらかいことに満足した。

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