2021年3月27日土曜日

種の名前が「フラガール」

                      
 晩酌のつまみに細長いミニトマトが出た=写真。カミサンの友達が持ってきた。「『赤井で買った』といっていた」。ほかのミニトマト、あるいは普通の中玉より甘い。皮はやや厚めだが、それだって「いい歯ごたえ」のうちだ。一発で好きになった。

 小さいころに食べたトマトは甘かった。昭和30年代の高度経済成長が始まる前、家の裏に家庭菜園があった。ネギなどのほかにトマトを栽培していた。家のものか近所からのもらいものかはわからないが、完熟したトマトの甘さが味蕾(みらい)に刷り込まれた。それが、私のトマトの味の基準になった。今売られているトマトは、その基準からは程遠い。トマトはなんでこんなに味が薄くなったのか。

トマトだけではない。ホウレンソウもそう。在来のホウレンソウは赤根が大きくて甘かった。今のホウレンソウは根が小さい。セイヨウホウレンソウだからか。

根深ネギ。これも輝くように白く太くてまっすぐだ。見た目はきれいだが、加熱しても甘みが薄くて硬い。中通りに近い夏井川渓谷の小集落では、加熱すると甘くて軟らかい、昔野菜の「三春ネギ」を栽培している。そこに隠居があるので、最初、住人に種を分けてもらい、自分で消費するていどの量を栽培した。種も採って、自産自消を続けた。去年(2020年)は田村市から苗を取り寄せた。

ま、それより味の濃いミニトマトだ。素性を知りたくて、「赤井/ミニトマト」で検索したら、いわき市平赤井の「あかい菜園」「フラガール」という言葉がヒットした。あかい菜園がつくっているミニトマトの商品名が「フラガール」? すると、カミサンが「パッケージに『フラガール』とあった」という。

次の日、あかい菜園の経営者と会議で一緒になった。いろいろ“取材”した。「フラガール」は商品名ではなく、「種」の名前だった。種? 種苗メーカーが「フラガール」の名で登録した。逆にいうと、「フラガール」はすでにいろんなものに登録されている。「種」だけが未登録だったということらしい。

売りは「濃厚な甘さ、フルーツ感覚で食べられる濃密トマト」だ。いわきにぴったりの種なので、地元のほかの企業、たとえばワンダーファーム(四倉)でも、この「フラガール」を使って溶液栽培をしている。錦町の助川農園でも「フラガール」の栽培を始めたようだ。

「すると、同じ味?」。そうとも言い切れないのだという。企業によって栽培管理が微妙に違う。それが味に反映される。直売所を訪れる客のなかには舌の肥えた人がいて、味の違いを指摘する。なるほど、おもしろいが厳しいエピソードだ。

小川町の平地にもトマト栽培の大型施設ができた。夏井川渓谷の隠居へ行く途中にある。こちらは大玉を中心にした栽培らしい。まずは種のフラガールを使ってできたミニトマトだ。あかい菜園では入り口に直売所を設けている。土・日・祝日は休みだという。平日、そっちの方へ行く機会があったらぜひ寄ってみよう。

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