用があって、いわき市暮らしの伝承郷を訪ねた。合間に館長氏の案内で昔野菜の畑を見た。
「小白井きゅうり」が収穫期に入っていた。ずんぐりむっくりの実をもらったことはあるが、畑に生(な)っている姿=写真上=を見るのは初めてだ。20センチ弱になったら食べごろらしい。皮は薄いがやや硬い。しかし、中身は軟らかくてみずみずしい。
伝承郷に補助職員として勤めている人が作業をしていた。たまたま今年(2021年)は、わが家と夏井川渓谷の隠居で小白井きゅうりを栽培している。見るもの・聞くものすべてが参考になる。
「葉のカットは?」「風通しを考えて」。なるほど。古くなった葉はもちろんだが、込み入ったところは日当たりや風通しを考えて整葉する。そうでないと「うどんこ病」になりやすい、ということなのだろう。
頭ではわかっていても、実際、どの時点で整葉するかとなると、判断に迷う。畑を見て、話を聞いて、迷いが晴れた。
渓谷の隠居の小白井きゅうりは、花が咲いて実が生り始めたばかり。赤ちゃんのときから貫禄十分というか、ずんぐりむっくりしている=写真下。
わが家の台所の軒下では、うどんこ病らしい白斑が葉に出ているものもある。今は思いつきで粘着テープをあててこれを除去しているが、やはり完全に取り除くのは難しい。そうしているうちに葉が役目を終えて傷んでくる。ほかの葉の展開を見ながら、古い葉を除去する。そのタイミングをはかるうえで、伝承郷での見聞が参考になった。
管理棟内の一角に、小白井きゅうりやナスなどが入った袋が置いてあった。「どうぞ持って帰ってください」。補助職員さんの言葉を思い出して1袋を手に取ると、今度は受付の職員さんから声がかかる。「きょうはもう来館者はいないので、全部持って行ってください」。勧められるままに3袋を持ち帰った。
お福分けの野菜である。近所への再お福分けと料理はカミサンにまかせる。まずは小白井きゅうりの酢の物が晩酌のおかずになって出てきた。きゅうりもみも出た。翌朝は味噌汁に入っていた。『いわき昔野菜図譜』(いわき市、2011年)には、ほかにきゅうり炒めも載る。
川前・小白井地区では、塩水による「どぶ漬け」が主流だが、軒下で小白井きゅうりが収穫できるようになったら糠漬けを試してみようと思う。
子どものころ食べたキュウリは、小白井きゅうりに似てずんぐりむっくりタイプだった。どこかの畑で皮が赤みがかって太くなっていたキュウリを見た記憶がある。種採り用に残しておいたものだったか。
種の採り方もいちおうは頭に入っている。とはいえ、三春ネギと辛み大根のほかに、小白井きゅうりもとなると、隠居の庭だけでは間に合わない。ひたひたと打ち寄せる老いの波につかりながら、そろそろ若い人に「種をつなぐ」ことを考えねば――そんなことが頭をよぎる。
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