2021年7月7日水曜日

キク科の花たち

        
 後輩がアーティチョークの花を6本持ってきた。畑でアーティチョークを栽培している。前にもらって硬い皮をむき、“花托”を刻んで素揚げにして食べた。収穫されずに畑に残ったものが開花したのだという。

カミサンが床の間に飾った=写真上1。アーティチョークそのものがソフトボール大だから、その頭が開いて咲き出した花も大きい。直径10センチ、いやそれ以上あるかもしれない。

花瓶にいけられたアーティチョークの花を見ているうちに、ゴッホの「ひまわり」を思い出した。「ひまわり」シリーズの1点を、何十億円かで日本の企業が手に入れたのはいつだったか。

ただし、私が興味を持ったのは花と花瓶の関係だ。作家の堀辰雄は「向日葵(ひまわり)は西洋人より背が高い」と言った。が、そこまで大きいと、花の径も20~30センチはあるだろう。ゴッホのひまわりは、どうやらそれとは品種が違うらしい。

アーティチョークの花にはどっしりした花瓶が合う。それと同じで、ゴッホのひまわりも、どっしりした花瓶にいけられている。その対比からゴッホが描いたヒマワリの大きさが推測できた。アーティチョークの花と同じくらいだろう。

アーティチョークも、ヒマワリもキク科の花だ。これもそうらしい、花の雰囲気が似ている=写真上2。いわき昔野菜保存会から会報「ROOT(ルート)」が届いた。表紙の写真は、一見アザミ風。アザミに似た花を咲かせる昔野菜といえば、ゴボーの一種の「おかごぼう」だ。

『いわき昔野菜図譜』(いわき市、2011年)に「おかごぼう」の産地や特徴などが載る。滝野川系のゴボーで、いわき市内では渡辺町田部地区で栽培されている。

「畑の中で芯が立ってきて育つものがあるので、それを12月上・中旬に植え替えて、翌年の8月頃に採種します」。ということは、これからが花の最盛期か。ゴボーはキク科、アザミもキク科。アザミに似ているのは当たり前だった。

ROOT」第6号では、東日本大震災から10年の節目に合わせて、巻頭に特別企画「あの日の記憶が、消えてしまわぬように。」が載る。震災直後、昔野菜の発掘・調査を行っていた「伝統農産物アーカイブ事業」のメンバーは、被災農家を尋ね歩いた。電話で安否も確認した。

 なかでも原発事故はもろに、昔野菜の栽培に影響した。生まれ育った地域から避難を余儀なくされる。農産物の出荷制限で農業を続けることがままならなくなる。

アーカイブ事業のあるメンバーが、山里から街のアパートに引っ越して生産を断念した農家に、「もう一度畑をやってみませんか」と提案、それで農業を続けるというケースもあった。

 前から生産者の高齢化や後継者不足が問題になっていたが、震災後はそれが顕在化し、種が途切れる恐れさえ出てきた。そこで発足したのが昔野菜保存会だった。私自身、三春ネギの栽培を続けているのは、原発事故に負けて種を途絶えさせたくない、という意地からでもある。キク科の花から、つい「あの日」と種の話になってしまった。

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