2021年7月1日木曜日

雨の森を歩く

        
 おととい(6月29日)は梅雨らしい一日になった。未明に降りだした雨が、午後、小やみになったところで街へ出かけた。用をすませたあと、石森山(平)へ車を走らせた。ここ何日か遊歩道の散歩を休んでいる。雨上がりの森の様子を見てみるか――

 平の街から石森山へのルートは一つ。平商業高校のわきを通って石森山へ駆け上がる。帰りは絹谷林道を下って草野へ抜ける。

 間もなく雨はやむはずと踏んでいたが、そうは問屋が卸さなかった。傘をさしてすり鉢の底のような遊歩道を歩いた。

 東北南部が梅雨入りをして10日目とはいえ、雨は少ない。夏空の日もある。そうしたなかでのやや強い降りだった。やみそうでやまない、傘をたたみたくてもたためない。が、森にはいいお湿りになったようだ。

 道端の折損木からキノコが発生していた。前に見たキノコもまだ形を保っている。ほかにも、傘の大きいキノコ、小さいキノコが地面から出ている。名前はわからない。ようやく「梅雨キノコ」のおでましだ。

 木材腐朽菌のアラゲキクラゲは雨に濡れて元気になっていた。人間の足に似た折損木のアラゲも生気がよみがえった=写真下。

 それを確認して遊歩道を戻り、また林道を下る。雨の日はすれ違う車もないと、たかをくくっていたら見事に裏切られた。前方に小型タンク車が現れた。車1台がやっとの林道でにらみ合ってもしかたがない。交差できるスペースまで50メートルほどバックする。

 そのお返しのようなものだった。バックし始めたあたりにオカトラノオの白い花が咲いていた=写真上。里山では今年(2021年)初めて見た。この1週間のうちに咲き出したようだ。

 日曜日(6月27日)に夏井川渓谷の隠居へ行ったとき、道沿いにオカトラノオはなかった。もう終わったのか、それとも姿を消したのか。平地の石森山で盛りなら、渓谷はこれからだろう。胸の奥にほのかな明かりがともる。

 東日本大震災と原発事故がおきた年(2011年)は、初夏がめぐってきても、梅雨に入っても、「季節のセンサー」ははたらかなかった。放射能でこれから先どうなることやら……。5月にウツギが咲き、6月にアヤメやホタルブクロ、オカトラノオが咲いても、花と向き合う気持ちにはなれなかった。

それが変わったのは、隠居の庭でネジバナを見たときだった。やっとカメラを向ける気になった。3・11から4カ月がたっていた。

きょうから7月。未明の4時過ぎ、ポリ袋に入った新聞を取り込むと少し濡れている。霧雨が音もなく降っていた。やはり、梅雨の真っただ中だ。郊外ではネムノキの花が、庭ではクチナシの花が咲き出す時節を迎えた。

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