2021年7月31日土曜日

根元が白いサハリンの公園木

                      
「サガレンって?」。図書館から借りた古い月刊誌を読んでいたカミサンが尋ねる。「サハリン、樺太のこと」。読書欄にノンフィクション作家梯久美子さんの『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』(角川書店、2020年)が紹介されていた。それならウチにある。珍しくすぐ見つけてカミサンに渡す。

2016年8月初旬、高専の同級生とサハリン、シベリア大陸のウラジオストク・ナホトカを旅した。

サハリン行の目的は、1人は父親が終戦時、村長を務めていた元泊(ボストチヌイ)を訪ねること。その旅自体が父の元へ嫁いだ母親の旅をたどることになった。私は「銀河鉄道の夜」の発想を得たとされる「賢治の樺太」をたどること、そしてサハリンの自然一般に触れることだった。

梯さんは2017年11月と翌年9月の2回、サハリンを旅した。それが本になり、1年前に拙ブログで紹介した。ブログを参考にしてつづる。

本は2部構成で、第1部「寝台特急、北へ」はサハリン東部の鉄道紀行。第2部「『賢治の樺太』をゆく」は、樺太での宮沢賢治の足跡を車でたどった。日ソ国境だった北緯50度の北はもちろん未知の土地だが、第2部の多くは私たちがたどったコースと重なる。

本のタイトルも,賢治が樺太を「サガレン」と呼んだからだった。しかも、2回目の通訳兼ガイドは私たちのときと同じミハリョフ・ワシリーだった。

ワシリーは植物だけでなく、キノコにも精通していた。「サハリンで人気のあるキノコはヤマドリタケモドキ。ほかに、ハナイグチ、アンズタケ、エノキタケ、タマゴタケ、タモギタケ、オオモミタケなどが採れる」「ハナイグチがとれるのはトドマツの林」。和名ですらすら解説する。望外の喜び、とはこのことだった。おかげで、サハリンではシイタケも発生することがわかった。

ワシリーに聞いておきたかったことがある。もうだいぶ前のことだが、BSプレミアムの「世界ふれあい街歩き」でカザフスタンのサマルカンドが紹介された。公園らしいところの木が、根元から1メートルほど白く塗られている。サハリンの州都、ユジノサハリンスク市内の公園木もそうだった=写真。

ネットにはあれこれ「理由」が載っている。まずは虫除け。次が、夜間の視認性をよくするため。確かにネットにアップされている写真には街路樹もあった。夜間の車の往来、つまり交通事故防止のためだとしたら、歩道しかない公園内の白塗りは別の理由があるはず。中国では虫除けのほかに、冬季、木が乾燥して日焼けするのを防ぐため、というのもあった。ユジノサハリンスクの公園木もこちらか。

公園木や街路樹の根元を石灰などで白く塗る習慣は、ロシアや中国、アジア、アメリカ大陸などに広く行き渡っているようだ。日本では寡聞にして知らない。が、リンゴ園では凍害を受けて枯れるのを防ぐために根元を白く塗るところもあるらしい。

疑問や不思議はそのまま受け止め、どこかにしまっておくと、いつか答えのかけらが見えてくる。5年前に撮った写真にやっと出番が回ってきた――そんな思いでいる。

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