2021年10月14日木曜日

三春ネギは秋まき

                             
 日曜日(10月10日)に「三春ネギ」の種をまいた。三春ネギは私の土いじりの原点だ。

 夏井川渓谷の隠居へ通い始めたのは四半世紀前。当時、地元の区長さんに招かれて酒を飲み、そのまま一泊した。朝食をごちそうになった。味噌汁はネギとジャガイモ。一口すすった瞬間、味蕾が反応した。香りがあって、甘くて、やわらかい。「このネギは?」「三春ネギ」。子どものころ口にしていたネギ・ジャガの味噌汁と同じ味だった。

 以来、三春ネギがいわき市の山里でも栽培されていることに感動し、懐かしさも手伝って、隠居の畑で栽培を続けている。

 本場の田村地方では、8月に「ヤトイ」という作業をする。溝を斜めに切って植え直し、曲がりネギにする。私も最初はそうしていたが、渓谷では植えっぱなしだ。それを知ってからは、私も手を抜いて土を寄せるだけにしている。ヤトイが年齢的にこたえるようになったことも大きい。

ネギには秋まきと春まきがある。いわきの平地のネギ(千住系)は春にまく。昔からの「いわき一本太ネギ」を栽培している平のSさんは「4月10日」と決めている。三春ネギはおそらく加賀系。ちょうど半年のスレがある。

 秋の播種~初夏の定植~追肥・土寄せ~晩秋の収穫がネギづくりのサイクルだ。これとは別に、採種用のネギを何本か残す。越冬してネギ坊主ができると種を採り、秋まで冷蔵庫で保管する。

 毎年安定して芽を出し、育ち、大きくなるわけではない。砂漠生まれのネギは湿気に弱い。梅雨に雨が続くと根腐れを起こす。種も湿って饐(す)えた匂いを発していたことがある。全滅だった。

それで去年(2020年)は、田村市の実家の兄が確保してくれた三春ネギの苗を定植した。今年、越年した何本かから種を採り、保管しておいたのを先の日曜日にまいた。

種は小瓶に入る程度だった=写真上1。量的には少ないと思っていたが、苗床=写真上2=が狭かったこともあって、筋まきの溝を増やし、それでも余った種は、急きょ、苗床を広げてばらまきにした。

ネギの芽生えは不思議に満ちている。地中3ミリほどのところで眠っていた黒い種から、二つ折りの状態で幼根が地面にあらわれる。人間が仰向けに寝た状態のまま膝を折ると山形になる。それに似ている。

 その山形のうち、足先が幼根となり、太ももが茎となる。黒い種の殻はそのまま茎とつながって地表に出てくる。数字でいえば「7」、記号でいえば「?」のかたちに似る。頭の黒い殻が脱落したあとは、緑の針になって空をめざす。

以上が、種をまいて10~15日たったころの様子だ。レイチェル・カーソンのいう「センス・オブ・ワンダー」(不思議さに目を見張る感性)に染まるとき。初収穫よりも、このときのいのちの形成がおもしろい。地面にはいつくばって、黒い帽子をかぶったネギの赤ちゃんに目をこらす。

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