触っただけで皮膚がただれ、誤食すれば時に死に至る猛毒キノコがある。回復しても小脳萎縮や言語・運動障害などが残ったりする。
カエンタケという。赤い炎のような形と色が、いかにも毒々しい。まだ出合ったことはない。
この厄介者が、どういうわけか「ナラ枯れ」が起きた木の周辺に発生する頻度が高いのだという。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で取り上げられたと思ったら、新聞にも注意を呼びかける記事が載った。最近、急にその存在がクローズアップされている。
ナラ枯れとカエンタケ発生の関係はよくわかっていない。しかし、地上でナラ枯れが起きると、根元や地中の根の方からカエンタケが現れる――そんな現象がみられる、という指摘には驚いた。
シイタケやナメコのような木材腐朽菌かと思ったら、どうもそうではないらしい。すでにナラ枯れの木に生息しているほかの菌がいて、その菌糸から栄養を得ている可能性が高いのだそうだ。「菌寄生菌」という言葉を初めて知った。
ナラ枯れ被害が発生している県や自治体では、広報資料をつくって警鐘を鳴らしている。ネットでそのチラシを読むことができる。
たとえば、四方を山林に囲まれた盆地のまち、神奈川県秦野(はだの)市の広報チラシにはこうある。
同市では近年、コナラなどの樹木が枯れる「ナラ枯れ」被害が発生している。カエンタケはナラ枯れ被害発生時、または数年後に多発する。誤って触った場合はすぐにせっけんで洗い、流水でよくすすいだあと病院へ行くように。
同時に、ナラ枯れの木の近くを通る場合は、倒木・落枝の危険性があるため、十分に注意をしてほしい。
要するに、ナラ枯れには事後に二つの危険がある、ということだ。一つは倒木・落枝、もう一つは猛毒キノコの発生。
いわきでも近年、ナラ枯れ被害が目立つようになった。毎週日曜日、夏井川渓谷の隠居へ行く。小川町高崎地内から渓谷に入ってすぐの上流、主に右岸・塩田地内の山林に“茶髪”が多く見られる。渓谷を縫う県道沿いにも何本かナラ枯れの大木がある。
大雨、あるいは大風の日、枯れた枝が折れて道路(県道小野四倉線)に落下する。先日も隠居から街へ戻る途中、ロックシェッドを抜けるとすぐの山側に落枝が寄せられていた=写真。ナラ枯れの大木がそばにある。そこから落下したようだ。
渓谷の県道を行き来する人は、倒木・落枝の恐れがある立ち枯れの木を頭に入れているはずだ。秦野市のチラシではないが、車が直撃を受けないよう、現場ではいったん木を見てから通り過ぎる。そんな立ち枯れ木が何本もある。
そして、今度は猛毒キノコだ。知人らが執筆・編集した『いわきキノコガイド』(旧いわき市観光協会、2001年)には、8月下旬、四時川渓谷(田人)で撮影されたカエンタケが載る。同じ田人の戸草川渓谷でも発生が確認されている。
欧米では、キノコの形から「死者の指」といわれているそうだ。いよいよ夏井川渓谷でも発生が普通になる?
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