2021年10月16日土曜日

『誕生鳥辞典』

           
 4年に1回、うるう年がくる。2月が1日増え、1年が366日になる。2月29日生まれの人も忘れずに加えた『366日誕生鳥辞典――世界の美しい鳥』(いろは出版、2021年)=写真=を、図書館から借りた。

日本の鳥ももちろん入っている。ひとことでいうと、鳥は美しい、そしておもしろい。不思議でもある。上野動物園の元園長・小宮輝之さんが文章を、画家の倉内渚さんが絵を担当した。

世の中には誕生石や誕生花がある。ならば誕生鳥があってもいいのではないか、というのが動機だったとか。

私たちがふだん目にする鳥は、カラスやスズメ、ヒヨドリ、ドバトぐらいだ。ハデな色でもなく、キバツな形をしているわけでもない。ところが、世界に目を転じると、「なんだ、これは……」という鳥がいっぱいいる。

鳥にまつわる記念日がたくさんある、国鳥を選定している国がある、国旗に鳥を描いている国がある。それぞれの独立記念日などに合わせて鳥を選んだ。さらには、かかわりのある月日や季節を選び、宝石の名を冠した鳥はそれぞれの月の誕生石にあわせた――と後書きにある。

とりあえず自分の誕生鳥を見たら、11月19日・コンゴウインコだった。中南米を代表する赤、青、黄色が鮮やかな大型のインコで、先住民はこの鳥の羽を祭礼の冠や飾りに利用している。「多くはひなのうちから飼い慣らし、毎年換羽の時期に落ちる羽を集積したもの」だとか。これだとインコと共存できる。

「なんだ、これは……」の筆頭は、4月12日・カタカケフウチョウの雄。雌に見せるディスプレイが変わっている。

一見、真っ黒いかたまりが雌の前にできる。その中に青い口のようなものが裂けて広がり、同じ青色の目のようなものが二つちょこんとつく。ジブリ作品に出てくる「ススワタリ(まっくろくろすけ)」を連想した。ススワタリを横に伸ばして、目と口を青くした感じ、といったら近いか。

5月3日・アカミノフウチョウ(雄)の色彩、同22日・キジオライチョウ(雄)の胸の奇妙なふくらみも印象に残る。

さて、いわきの山野との関連ではどうか。6月2日・アカショウビンは夏鳥だ。夏井川渓谷でこの四半世紀に1回だけ鳴き声を聞いた。旅の途中に一休みしたのだろう。

4月20日・カッコウはもはや、夏井川下流域(平野部)への飛来をあきらめたようだ。夏の夜明け、標高600メートルほどのいわきの里鬼ケ城(川前)へ行かないと鳴き声を聞くことができない。そんな希少種になった。4月20日が誕生鳥なのは、その日が「国際カッコウデー」だからだそうだ。

台湾を訪れたとき、映画「非情城市」の舞台になった九份でシロガシラを見た。俗に「ペタコ」と呼ばれている。まど・みちおさんの「蕃柘榴(ばんざくろ)が落ちるのだ」という詩に出てくる。
「どこからかペタコもやってきて/ぴろっ、ぴろっ、と啼いては/黄色い玉を/ぽとり、ぽとり、落とすのだ」

台湾の国鳥はヤマムスメ。これにも一度会いたいと思っている。残念ながらシロガシラもヤマムスメも『誕生鳥辞典』には載っていない。

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