2021年10月8日金曜日

ノーベル賞の季節

                                              NHKのローカルニュースで福島県内の「紅葉情報」が始まった。紅葉といっても、ヤマザクラやツツジではない。それらが赤く染まって散ったあとに色づくカエデの情報だ。

 夏井川渓谷はむろんまだ「青葉」だが、カエデの紅葉にとらわれていると、非カエデの紅葉の美しさを見のがしてしまう。いわゆる「錦繡(きんしゅう)」、この形容がぴったりなのが10月後半。カエデの紅葉が始まるのは11月も半ばに入ってからだ。

 紅葉情報と時を同じくして、ノーベル賞の発表が始まった。10月4日は医学生理学賞(2人)、翌5日は物理学賞(3人)だった。どちらも人間の日常生活に直結した「皮膚の神経や細胞の仕組み」を解明し、「温暖化」の予測法を開発したことが評価された。

 医学生理学賞を受賞した1人、デービッド・ジュリアスさん(米国)は「トウガラシの辛み成分『カプサイシン』を使い、皮膚の神経が熱に反応する仕組みを分子レベルで解明」した。細胞表面にある受容体が「辛み成分と高温という異なる種類の刺激に反応することで痛みなどとして感じられる」のだそうだ(福島民報=共同)。

 毎年、夏井川渓谷にある隠居の畑でトウガラシ=写真=を栽培する。今年(2021年)は、去年の実が残っているので、後輩にもらったハバネロのポット苗だけにした。

その実が真っ赤に色づいてきた。この超激辛をどう利用したらいいものか、ネットで調べたら、①カプサイシンは脂溶性②「辛さ」の正体は「熱さ」と「痛さ」――などといった情報にたどりついた。

「辛い」は「熱い」と「痛い」だったか。そう認識を新たにしたところへ、ノーベル医学生理学賞のニュースが飛び込んできた。辛さと熱さ・痛さの関連を最初に突き止めたのが、この人だった。研究の端緒はなんだったろう。ハバネロに痛い目に遭った?なんてことだったらおもしろいが。

 もう1人、物理学賞に決まった真鍋淑郎さん(米国=日本生まれ)は「大気の対流などを考慮した気候モデルを世界で初めて考案。二酸化炭素(CO₂)の増減が気温に影響することを示し、地球温暖化の予測に関する先駆的な研究を続けた業績」が評価された(同)。

 地球温暖化はすでに「地域温暖化」になって現れている。夏井川渓谷の滝は真冬の凍結が小さくなってきた。熱帯のキノコがいわきの山でも見つかっている。小名浜ではイセエビが捕れる。気温と海水温の上昇による影響が可視化されるようになった。

 10月に入っても真夏日になる(4日・山田で最高気温30.1度)。ちょうど図書館から星野智幸の短編集『焔』を借りて来て、「ピンク」という作品を読んでいたときだった。

「ピンク」は、8月6日から9日連続で40度超え――といった温暖化の日本を描く。「五日目には甲府で、日本の観測史上初めて五十度を超える五十・二度を記録した」

近未来の日本に暗澹(あんたん)とした思いでいたら、真鍋さんのニュースが入ってきた。

半世紀以上前に真鍋さんは温暖化を予測し、警鐘を鳴らした。受賞はもちろん喜ばしいが、いかに二酸化炭素を減らすか、あらためて人間の生き方が問われる時代に入った。カエデの紅葉だって、温暖化の影響で師走へとずれこみ気味だ。

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