2021年10月25日月曜日

川にも白波が立つ

                     
    まだ夏のような陽気だった10月前半、10日の朝。小川町三島の夏井川で、この秋初めてコハクチョウ1羽を見た。若鳥だった。けがをして残留した「エレン」にとっては、半年ぶりの仲間との再会だ。

日曜日だったので、夏井川渓谷の隠居で土いじりをした。午後は草野心平記念文学館へ行き、その帰りに三島へ出た。若鳥は姿を消していた。

いわき市の夏井川では、平地の平窪(平)が最も古い越冬地だ。平窪が過密状態になったためか、やがて上流の三島にも飛来するようになった。さらに、下流の塩~中神谷(平)に第三の越冬地ができた。こちらは大水で流された平窪の残留コハクチョウが呼び水になった。

神谷に飛来したばかりのコハクチョウは落ち着かない。あちこち行ったり来たりする。30年以上ウオッチングしてわかった「経験則」だ。ベースになるのはなんといっても平窪だろう。

街へ行った帰りには、必ず夏井川の堤防を利用する。三島でこの秋最初の飛来を確認してからは、狙いはむろんハクチョウ。

新川が合流する塩地内では、重機が出て川砂をかき集め、ダンプカーが積んで行く。それが今や当たり前の風景になった。最初に飛来したコハクチョウは「おや?」と思うかもしれない。が、やがて数が増えると重機も気にしなくなる。

10月中旬に入ると、急に冬のような寒さになった。まだ扇風機が残る茶の間で石油ストーブをたいた。

寒暖の急変はこたえる。動植物もそうだろう。ダウンジャケットを着たハクチョウはしかし、やっと過ごしやすくなったと感じているのではないか。

10月20日の午後、街へ行くのに夏井川の堤防を利用した。逆光のなかで川が波立っていた=写真上1。それで強風が吹いていることがわかる。そろそろ現れるか、と思ったが、ハクチョウの姿はなかった。

その後もマチへ出れば、帰りは夏井川の堤防を利用する。三島で初飛来を確認してから2週間近くたった22日夕、中神谷の夏井川に2羽が羽を休めていた=写真上2。1羽は若鳥だった。気温も下がって、いよいよ定着する段階に入ったようだ。

きのう(10月24日)は日曜日。夏井川渓谷の隠居へ出かけた。対岸の森を見ていると、毎年10月25日と決めて採ったキノコの記憶がよみがえる。クリタケだ。寒暖に関係なく、決まった時期に決まった倒木から発生した。

倒木が分解してぐずぐずになってからは、クリタケの姿を見ていない。もっとも、10年前に放射性物質が降り注いだので、出合っても写真を撮るだけだが。

そんな晩秋の楽しみが失われた今は、飛来したハクチョウがささやかな慰めになる。きのうは朝、三島で3羽(うち1羽は残留コハクの「エレン」)を確認し、昼前には平窪の背後地・赤井の「冬水田んぼ」で100羽以上の大群がえさをついばんでいるのを見た。圧巻だった。やはり、平窪は越冬の本拠地だ。

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