2022年5月15日日曜日

ドライマンゴー

        
 フィリピン産の「ドライマンゴー」だという=写真。エド君がお国の食べ物をお礼に持ってきた。エド君といっても、私は会ったことがない。カミサンも先日まで知らなかった。

大型連休が始まって間もない日の宵、天気が急変して雨になった。すると、わが家(米屋)にフィリピンの若者が飛び込んできた。

 カミサンが応対した。体が雨でぬれている。「傘、ありませんか」。あったら売ってほしいということだった。

 傘は売っていない。が、透明なビニール傘が何本かあった。出先で急に雨に降られると、コンビニに飛び込んで安い傘を買う。確か500円だった。雨が上がれば、その場に置いていく人もいる。そんな傘がいつの間にか集まった。そのうちの1本を進呈した。

 ついでにカミサンがいろいろ聞いたらしい。名前はエド、32歳。ラーメン店で働いている。その近くにアパートがある。歩いてスーパーのマルトへ買い物に来た帰りだった。

「また来ます」といって店を出たそうだ。およそ1週間後、エド君が顔を出した。そのとき、ドライマンゴーを置いていった。

エド君の話を聴きながら、思い出したことがある。もう20年以上前になるだろうか。雨ではないが、店に飾ってあるわら細工(米俵など)や民具を見て、飛び込んできた若者がいた。茨城県から運転免許の合宿教習に来ていた大学生だった。

やがて、若者はいわきのじゃんがら念仏踊りを調査し、いわきでネット古書店を起業する。あとでリアル古書店も開いた。

ずっと変わらないことがある。「これから飲みに行ってもいいですか」。突然、電話がかかってくる。前触れなしで現れることもある。

あるときは、その日初めてリアル古書店にやって来たという、アメリカの学者の卵を連れて来た。日米の血が混じっている。コロンビア大学で文化人類学を専攻した。

3週間後、彼女がまたやって来た。わが家の近所に原発避難をした女性がいる。わが家で女性にインタビューをした。

そのほかにも、従業員だとか、その友達だとかが来た。そうやってときどき、若い人と話すと、時代の空気のようなものが感じられる。

老いては子に、いや若い人に従え。同時に、来る者は拒まず、去る者も、もちろん追わない――そんな間合いでいると接しやすい。

ドライマンゴーに戻る。包装紙には「金呂宋」や「芒菓乾」の漢字のほかに、「グァダルーペ」「フィリピン」 「セブ」といった英語が印刷されている。

「呂宋」はルソン、「芒菓」は「芒果」、つまりマンゴーだ。「セブ」はフィリピンのセブ市。セブ島=セブ州の州都でもある。セブでつくられた「グァダルーペ」という商品名のドライマンゴー、ということだろうか。

ドライといっても、せんべいみたいに硬いわけではない。しんなりしている。味も濃い。甘さがしばらく口に残る。

ドライマンゴーを口にしながら、フィリピンでは大統領選が行われたばかりだ、あのマルコスの長男が当選した、今度エド君が来たら、会って話を聞いてみたい――そんな思いがわいてきた。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

突然のコメント失礼します。
エドくんと知り合いのものです。こちらのブログと偶然出会い、彼に教えてあげました。とても感動していましたよ!