2022年5月6日金曜日

「蒸しかまど」をめぐる旅

                               
  早稲田の修士課程で学んでいるY君が、いわきへ「蒸しかまど」(木炭を燃料にした陶器製の大型炊飯器)の調査にやって来た。

2月に会う予定だったが、コロナ禍で延び延びになっていた。この連休にやっと対面し、蒸しかまどの現物も見せることができた。

Y君から、自己紹介を兼ねて問い合わせがあったのは去年(2021年)の暮れ。おさらいの意味で経過を振り返る。

「蒸しかまど」の歴史を調べている。私のブログに紹介されている新聞記事が非常に参考になった。私が「蒸しがま」でご飯を炊いた経験があるという記事も読んだ。ついては、いわきを訪ねて話を聴きたい――

若い学究の情熱に蒸しかまどへの郷愁が反応して日程の調整に入り、2月中旬に会うことになった。

ところが、なんというタイミングの悪さか。福島県に「まん延防止等重点措置」が適用され、いわき市でも「感染拡大防止一斉行動」が始まった。これでは対面調査を先に伸ばしてもらうしかない。

Y君はこの間、ネットで公開されている「レファレンス協同データベース」や、いわき市立図書館のホームページを利用していわきの地域新聞に当たり、自分なりに情報を収集したようだ。

私がブログで紹介した地域新聞は、昭和7(1932)年1月13日付「常磐毎日新聞」(「小鍛式極東ムシカマド製造」の広告)と、同10(1935)年6月29日付同新聞(「平町特産のムシ竈製造」の記事)の二つ。

Y君は蒸しかまどの新案特許をとった平・三町目の「小鍛冶商店」の広告に着目し、電話番号を手がかりにして子孫にたどり着いた。その人にもこの連休中に会って話を聴き、親戚の寺が所有している蒸しかまどを見た。

カミサンも蒸しかまどの火の番をした経験がある。実家の物置を直すとき、蒸しかまどが出てきた。今、それは夏井川渓谷の隠居に保管されている。

カミサンの聞き取りを終えたあと、Y君を連れて隠居へ出かけた。Y君はさっそく蒸しかまどの形状を画像に収めたり、寸法を測ったりした=写真上1。

 「数字がありますね」。私らは気づかなかったが、蒸しかまどの上蓋に数字が刻印されていた。「特許」「第306973号」「第253373号」と読める=写真上2。小鍛冶商店の特許番号は「第153115号」だから、それとは違う。

 小鍛冶商店そのものも、昭和6(1931)年の「平町職業別明略圖」には載っているが、その何年か後に発行された「明略圖」にはないそうだ。

 Y君は、私らに会った日は磐越東線を利用して郡山に泊まり、翌日は奥会津へ足を延ばして蒸しかまどを調べた。

 「また来ます」。そういって、いわき駅前のラトブで車から降りた。蒸しかまど製造・使用の地域的広がり、民俗だけでなく、小鍛冶商店の歴史といったことも含めて、Y君の今後の調査・研究に期待がふくらむ。久しぶりに私も知的刺激を受けた。

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