2022年5月9日月曜日

ホー、ホケベキョ

5月も大型連休が終わると、決まって思い出す詩がある。草野心平の「五月」。「すこし落着いてくれよ五月。/ぼうっと人がたたずむように少し休んでくれよ五月。」
 この2行のあとに、樹木の冬と芽生えの春、うっそうとした夏を語りながら、1年で一番過ごしやすい5月に呼びかける。

「五月は樹木や花たちの溢れるとき。小鳥たちの恋愛のとき。/雨とうっそうの夏になるまえのひととき五月よ。/落着き休み。/まんべんなく黒子(ほくろ)も足裏も見せてくれよ五月。」

今年(2022年)の大型連休は4月29日から5月8日までの10日間だった。終わったと思ったら、あすから5月の中旬だ。心平の詩ではないが、5月よ、そう急がないでくれ――そんな気持ちが募る。

毎日が日曜日の人間には、平日も休日もない。それでも、約束や予定が入る。結局、大型連休と連動した過ごし方になった。

前半は土曜日の4月30日にコロナワクチン3回目の接種をした。後半の「みどりの日」は東京から若い学究が「蒸しかまど」の調査に来て、半日付き合った。「こどもの日」はダンシャリで出た衣類を引き取りにアッシー君を務めた。

さらに、次の日の夜は地域の会議があり、翌日は朝から所属する団体の総会資料づくりをするといったように、毎日、頭を切り替えながら過ごした。

いくら毎日が日曜日とはいえ、ほんとうの日曜日は自分に帰るいい機会だ。夏井川渓谷の隠居へ行って土いじりをすると、なぜか気持ちが落ち着く。

大型連休最終日の日曜日(5月8日)は、いつもより1時間ほど早く隠居へ出かけた。風が強い。いわゆる「青嵐」。防寒のために薄手のコートをはおった。

「ホー、ホケベキョ」。最初に耳に飛び込んできたのは、ウグイスのさえずりだった。「ホケキョ」が渓谷では「ホケベキョ」になる。卵からかえったときに、親のさえずりを学習するのか、あるいはそうさえずるように生まれついたのか。

 いずれにせよ、鳥にも方言がある。夏井川の河口に近い平野部でさえずるなかにも「ホケベキョ」派がいる。

「ホー、ホケベキョ」を聞きながら、菜園に生ごみを埋めた。埋めると、決まってほじくり返す動物がいる。犯人はタヌキかハクビシンに違いない。

連休前の日曜日(4月24日)、たまたま隠居の近く、川岸に広がる空き地を歩いていたら、ハクビシンが死んでいた=写真。

タヌキは対岸の森にすんでいて、日中、発電所のつり橋を渡って人里にやって来るのを目撃したことがある。ハクビシンも民家の天井ではなく、森にすみかがあって、人里に現われたあと、なにかの原因で息絶えたか。

   その日、菜園に埋めた生ごみの跡はそのままだった。大型連休中の2回の日曜日も、同じように無事だった。すると、菜園にやって来たのは……。つい死んだハクビシンのことが思い浮かんだ。 

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