2022年5月8日日曜日

侵略するヨシ

                     
  夏井川渓谷にある隠居の庭は広い。分教場の校庭くらいはある。もとは畑で、義父が借地し、盛り土をして石垣を組み、二段の庭にした。

 下の庭は東西が約30メートル、南北が約10メートルある。家なら3軒は建つ。放置すると荒れ野に帰るので、知り合いの造園業者に頼んで年2回、草刈りをした。それを1回にしたら、ヨシで覆われるようになった。

下の庭の西端にフキが自生する。そのフキがヨシに飲み込まれつつある。これでは春先にフキノトウを摘む楽しみがなくなる。

カミサンの知り合いの元林業女子や、私の後輩がヨシを刈ってくれるようになったら、少し勢いが衰えた。

その効果か、去年(2021年)は日曜日のたびにカミサンがフキノトウを摘んだ。若いフキも採った。フキの合間に生えたヨシを刈り取ると、立派なフキ畑になった。今年も同じようにいっぱいフキノトウと若いフキを採った。

ヨシは地下茎で増える。地上部を刈り取っただけでは増殖は止まらない。地下茎を切断して掘り起こすのが一番だが、根が強いので耕運機でも難しい。

あるとき、刈り込まれた下の庭の半分以上が石とともにほじくり返されて、黒い土をさらしていた。ヨシの地下茎もところどころで切断されていた。ミミズを狙うイノシシの仕業だった。このときばかりはイノシシに感謝した。

同じように、ヨシが繁茂した空き地が川岸にある。小流れをはさんで上流側に発電所の広場がある。

トラックが止まっていたり、コンテナハウスが立っていたりする。草は小流れの側にしか生えていない。

小流れは山側の石垣に沿って東進し、道路に埋められたヒューム管で直角に南進したあと、夏井川に注ぐ。

若いころは小流れに光が当たるよう、土手の草を刈ったり、ドクダミやスギナを引っこ抜いたりした。震災後、それをやめたら、隣接するヨシ原からヨシが侵入してきた。

小流れの小さな湿地には、毎年、キクザキイチゲとアブクマトラノオが咲く。それを見るのが楽しみだったが、令和元(2019)年10月の台風で冠水し、土砂と流木が残った。以来、花の姿を見ることがなくなった。

それだけではない。大水のあと、石垣の下の小流れをイノシシがほじくり返したために、そばの広場も常時、湿地のようになっている。小流れは水量が減り、広場に新しい小流れができた。

ヨシ原との境になっていた小流れには、コゴミ(クサソテツ)が群生している。先日、見たら、いっぱい生えていた=写真。これはこれでうれしいのだが……。ヨシの新芽も出ていた。とうとうヨシが小流れを越えて広場へと侵略を始めたのだ。

自然環境はいつも同じではない。自然(湿地)が自然(大水・イノシシ・ヨシなど)の影響を受け、関係しあって絶えず変化している。ヨシはどこまで地下茎を伸ばすのか、想像しただけでも気が滅入る。

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