この春と初夏は、カミサンが毎週日曜日、フキ摘みに精を出したために、食卓には「きゃらぶき」が絶えなかった。
フキは、夏井川渓谷の隠居の庭に群生している。わざわざよそへ採りに行く必要はない。庭の草をとる感覚で摘むことができる。
今年(2022年)は、フキノトウの 発生が遅れた。が、3月になって出始めると、次々に現れた。これも毎週、カミサンが採った。
きゃらぶきは、若いフキを使うので皮をむく必要がない。しかし、丈がのびたフキはそうはいかない。煮物や炒め物にするのに、下ごしらえをする必要がある。
それでも、三和町のふれあい市場や道の駅よつくら港で売っているフキのようには軟らかくならない。何か下ごしらえで抜けているものがあるのだろうか。「食べるだけ」の人間にはよくわからない。
ミョウガタケ=写真上1=は、わが家の庭に出る。これは私が朝、根元に包丁を入れて切り取る。小口切りにして味噌汁に放す。口の中に広がる独特の香りに、春がきたことを実感する。
里山を巡り歩いていたころは、たまに少量を摘んでおひたしにした。この山菜も香りと苦みがある。
香りにはストレスを解消する働きがあり、苦みには体内の老廃物や毒素を排出する効果が期待できるという。
コゴミ(クサソテツ)は隠居の近くに出る。今年(2022年)は見に行くのが遅れて、葉が開ききっていた。摘むのをあきらめていたら、お福分けがどっさり届いた。
コゴミはワラビと違ってあく抜きをする必要がない。簡単におひたしにできる。温和な味は万民向きだろう。
といっても、旬は決まっている。「賞味期限」がある。例えば、ミツバ。これがわが家の南隣、義弟の家の庭に群生している。
カミサンが草むしりの延長で、大きい葉のミツバを摘んだ。刻んでみそ汁に放したら、葉が硬かった。中原中也の「骨」に出てくる「みつばのおひたし」のような感慨からはほど遠い。
ミョウガタケも、夏になると丈がのびて硬くなる。現役のころ、土曜日に隠居に泊まり、庭からミョウガタケを取って来て、小口切りにして味噌汁に放したが、硬くて食べられたものではなかった。
夏井川渓谷の小集落で教えられたことばに「終わり初物」がある。「初物」はシーズン最初に収穫・採取、あるいは買って口にする野菜・果実・山菜・キノコなどのことだ。「終わり初物」はその逆、旬を過ぎたので収穫・採取をこれで終わりにする、というときに使う。
ワラビは、渓谷では4月末に「初物」が手に入る。摘まれたワラビからはまた子ワラビが出る。これをまた摘む。そうして夏がくると、次の年のことを考えて「終わり初物」にする。
わが家のミョウガタケも、丈が伸びて葉を広げるようになった。義弟の庭のミツバ同様、終わり初物にする時期が近づいてきた。
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